大まかな見積もりだが、衛星ならば打ち上げも含めて1機200億円、軌道上の予備も含めて3機で600億円もあれば15年間使えるデジタル放送設備が手に入る。HDTVというメディアの寿命が30年とすれば1200億円。アナログ放送並みに50年近く持つとしても衛星3世代で1800億円ということになる。
しかし、そうはならなかった。衛星は衛星でチャンネルを増やして衛星デジタル放送を実施することになり、従来通りの地上波をデジタル化することになった。7月24日のアナログ放送停止に向けた、さまざまな設備更新のコストは総務省負担分だけで1兆円を超え、他官庁の投入した予算も合わせると合計2兆円にもなるという。
それだけではなく、地上デジタル放送は、周波数の低いUHF帯を使った結果、伝送する情報量が限られることになってしまった。地上デジタル放送は1440×1080ドットの動画像を横長の画素を使って16:9の画面に表示している。より大量の情報を伝送できる12GHzの電波を使うデジタルBS放送は、1920×1080ドットだ。同じHDTVでもデジタルBSの方が画像がきれいなのである。
地上デジタル放送は、規格策定にあたってもう一つの失敗を犯した。情報圧縮技術の急速な進歩を見過ごしたのだ。地上デジタル放送はMPEG-2という国際標準の情報圧縮の手法を採用した。ところがその後の急速な進歩で、より圧縮率が高くて画像もきれいなMPEG-4という手順が国際規格になってしまった。
アナログ放送終了から古い体制のきしむ音がする:松浦晋也「人と技術と情報の界面を探る」 (via kazunt)
10ヶ月前 | 固定リンク | 2011年 7月 29日 | 
