2011年 5月 30日 はてなブックマーク -
  • 意外なことに海賊の組織は民主的で,船長は投票で選ばれた.また船長とは独立のクオーターマスターという役職がやはり選挙で 選ばれていて船長に対する抑制も制度化されていた.(これらの海賊組織はフランス革命やアメリカ独立戦争より前の時代だということを考えると驚くべきこと だ)何故そうだったのか.そもそも海賊船はどこかの船を集団で盗んだものであり,一種の共同事業となる.外部からのエクイティ提供者やローン提供者がいな いためエージェント問題が小さく,海賊1人1人の動機が収奪収益の極大化に収斂する.また違法組織なので,政府の法制度を利用できない.このような事情のため合目的的制度に近い制度をつくる制度的なインセンティブがある.その結果,収奪の意思決定は独裁的に決めるのが望ましく船長職をおくが,海賊1人1人の意欲を引き出すため(フリーライダー問題の解決のため)に船長の横暴を抑えるという抑制装置のある平等な組織が形成された.
  • また海賊へのリクルートは強制徴用ではなかった.これは強制徴用では海賊行為の意欲を高められないばかりか,脱走や当局への通報リスクがあるので難しかったこと,商用船においてはエージェント問題から船員の待遇が悪かったことから商用船員からのリクルートが容易だったことによる.この結果海賊への参加脱退は基本的に自由だった3.多くの海賊が強制徴用だったとする文献があるが,これは当局による摘発の際にそのように言い張った方が有利だったためだと思われる.
  • 自由参加組織だったので,参加時に「掟」に従うことを誓約するという方法が可能だった.これにより,効率的な収奪執行,内部利害対立(負の外部性)問題の解決についてかなり効果的な法の支配が可能になった.
  • 収益分配ルールも合理的だった.勇敢な行為を行ったものへの報酬,怪我をした場合の補償は厚く,先取特権的に最初に分配された.これはフリーライダー問題へのひとつの対処といえる.またその後の分配も驚くほどフラットだった.(船長でせいぜい一般海賊の2倍程度)これは自由参加組織だったことの結果としてリクルートを巡って海賊船同士の競争があったことも影響しているだろう.
  • 収奪収益の極大化のインセンティブが大きいので,結果的に同時代の商用船に比べ黒人差別は少なかった.多くの黒人海賊は奴隷ではなく自由人として自由参加していた.
  • 海賊は収奪の際の相手の抵抗リスク(武 力による抵抗のほか,財宝を隠したり海に投げ込むことも問題になった)を減らすために「残忍で狂気に満ちている」「しかし協力的だったものの命は助ける」 という名声を高めることに腐心した.そして実際に残忍な拷問方法を多く考案したし,髑髏のマークもこの文脈で良く理解できる4.現在につながる彼等のイメージはこのブランド戦略の結果によるところが大きい.
  • 書評 「海賊の経済学」 - shorebird 進化心理学中心の書評など (via gtokio)

    11ヶ月前 | | 2011年 5月 30日 | このエントリーを含むはてなブックマーク