池上 一例をご紹介しましょう。たとえば、書籍で10万部売れたらベストセラーですよね。出版社も書店も大喜びのはずです。おかげさまで書籍版『学べるニュース』は発行まもなくすぐに10万部に達しました。私たちは喜び勇んでテレビ局のほうに報告したんです。すると何て言われたと思いますか?
「えっ、たった10万部? どうしてそんなに騒いでいるんですか」テレビ局の人は、基本的に視聴率でものごとを換算する癖があります。視聴率10%で1000万人が視聴している計算になる。つまり毎日彼らは 1000万人、2000万人を相手にしているわけです。そんなテレビ局の人たちにしてみれば10万という数は視聴率換算すると0.1%。番組だったら瞬間打ち切りの数字です。かくして「えっ、たった10万?」と受け取ってしまうわけですね。
——たしかに、視聴率で考えたら、10万は「ゼロ」と同じですね。出版業界では、今どき10万部の書籍が作れたら拍手喝采モノですが。
池上 そうなんです。ところが、感覚が違うのはテレビ局の側だけじゃないんです。一方で、出版社側にもこんなズレがありました。
「いま『学べるニュース』の視聴率ってどのくらいですか?」
「15%前後です」
「え、15%しかないんですか?もっと視聴率、高いと思っていたのですが……」
今度はテレビ局側が腰を抜かす番でした。
いまやテレビ番組で視聴率15%というのはゴールデンタイムにおいてもかなりの好成績です。ところが、テレビ局の外の人たちには、かつての「高視聴率=20%以上」というネットもケータイも存在しなかった90年代以前の「常識」のイメージがいまだに残っているんですね。そこで私の登場です。テレビ局の人にはこう説明します。
「書籍で10万部、というと視聴率で15%に達したぐらいの成績なんですよ」
「へえ、それはすごいですねえ」
一方の出版社にもこう説明します。
「視聴率15%というのは、書籍で10万部越えしたくらいのイメージです」
「おお、それはたいしたものだ」これでどちらも丸くおさまります。
池上彰さんに聞く! なぜメディアは「わかりやすく伝える」ことができないんでしょうか?:日経ビジネスオンライン (via tamachide)
(出典: foreverbluebird)
